2月2日(土)に開催された第8回環境シンポジウムで、講師の吉村伸一さん(株式会社吉村伸一流域計画室 代表取締役/元横浜市職員)からは、実践例をもとにした「多自然川づくりにつ」についての講演、野川の自然河川化の促進に向けた貴重なアドバイスがあった。
○多自然川づくりとは
治水とともに生物多様性や景観に配慮した河川整備を行う中で、人間が自然を全部つくってしまうのではなく、自然(川)の働きに委ねられるところは委ねる河川整備の方法。具体的には、川幅を広くとって川の自由度を高くする、水際は固めない、護岸は後方に置く、拡幅する場合も単純に両岸を拡幅するのではなく、可能であれば川岸の片方を残すといった方法。
吉村さんによれば、“川は本来、水の流れに変化があったり(瀬や淵)、水際に植生があったりと複雑な構造をしている。それが川らしい川”。
吉村さんが関わり先駆的事例として知られるいたち川(横浜市)では、改修されて河床や水際が単純な構造になってしまっていたものを、河川内に河原を再現、さらに上流区間にはいくつかの水辺拠点も整備、旧河道と新河道との間は公園にするなど、川らしさを取りもどすと同時に、川を軸とするまちづくりも実現した。
そのほか北海道の真駒内川では、河岸は切土のままで護岸は後方においてあり、そのような控え護岸にすると、護岸の前に川の作用を受け止めるスペースができるので、治水上も有利になるとのこと。
○川の再生とまちづくり
川づくりを契機に、豊かなまちの空間をつくっていく、川の中だけではなく、親水公園や川沿いの遊歩道の整備など、川が流れる空間全体を豊かにするという発想が重要。横浜市の和泉川では、広く土地を買って周辺にある緑地と川をつなぐ「川・まちづくりプラン」を立て、一部が実現したとのこと。
○野川の親水化整備の早期実現
吉村さんからは、“野川の改修に合わせて、周辺の土地を活用して、緑地や公園として整備すべき。野川の所管は東京都だとしても、市や市民がこのようなプランを用意して、提案していくことが、野川の親水化整備の早期実現につながる。”とのアドバイスがあった。
これからの野川を“どんな川にしたいのか”ゲリラ豪雨にも耐えられる安全な川、多様な生物の棲める川、子どもたちが水遊びのできる川、うるおいの景観・・・みんなで考え、実現に向けて力を合わせていきたいと思う。